その15・・・大繁盛!?


「you」のマスターがAVroadと言う喫茶店を紹介してくれたのには、まずマスターがあまり僕の商売の話に乗り気ではなかったということがありました。面倒なことは増やしたくなかったのでしょう。マスターはもうお子さんも手離れしていて、今後の蓄えも多分十分で、あとは自分が好きな店を自分の好きなようにやって行きたいのだと思います。そこへ来て、訳の分からぬ英会話野郎が現れて、この場所を貸して欲しいと言い出した訳ですからかなり無理です。

そして気が進まぬ代わりにマスターの薦めてくれたAVroadは悪くないと思い、話をして下さいとお願いしました。今考えると、よくまあ数回足を運んだだけの人間にそこまでしてくれたと思います。
ところが結果「丁重にお断りをして下さい」と言われたそうです。
どうもAVroadのオーナーは他の策があるらしく、確かにあの場所ならおそらく僕らが来るよりもっとお客さんをGetできるのだと思います。
ガッカリした僕。しかし、その断りの報告に続けてマスターは言いました。

「しょうがないから、うちでやってもいいよ」

(えっ?)と驚いた顔の僕と目が合うと、
「でも、次のちゃんとした場所が見つかるまでだよ」
と続けました。

マスターは僕がやっている事に理解を示してくれたと同時に興味を示してくれたのだと思います。確か「面白そうだから」か「頑張ってるみたいだから」と言う感じの事で協力してくれることにしてくれた様なのです。たった、4,5回話した人間に対してここまでしてくれるとは。

「あ、ありがとうございますぅうう。。。くぅ(涙;)」

と言う感じで正にお代官様にゆるして頂いた気分でした。
その様に、最後の砦で何とか僕のwishが実現することになったのです。

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 僕は若い頃、情熱とか人間関係とかを少しあざ笑っていたと言うか、もっと合理的なものが大切だと思っていました。情に流されると、判断を見誤ると言う視点でした。
しかし、実際社会に出てみると、それらがいかに大切な事かを実感させられました。また、今、本当に自分の店をやっている人はお金儲けよりも大切な事があるのだと言う事を再確認させられました。結局人間は感情的な生き物で、お金の為ではなく、自分の満足や気持ちによって物事が判断される事はどうやら間違ってはいないし、結果はやはり正しいのです。

結局僕にとっても、AVroadよりyouの方が落ち着けるし、良かったんじゃないかと思いました。

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 その後は、僕は直接の知り合いのほかに、この様なブログ的日記をインターネットの自分のサイトにアップしていたので、結構たくさんの方々に関心を持って頂き、「是非行きたい、いや絶対行く」的なメールを戴いたりしていました。
スタッフは、まずは知り合いと思っていましたが、彼らも仕事を持っていて、なかなかスケジュールが合いません。それでワーキングホリデー協会に行って、募集広告を出しました。母校である横浜国立大学にも、留学生向けの募集広告を出しました。
結果2名のイギリス人男性と1名のブラジル人女性(英語は流暢)を採用。
インド人やアジアの人も何人か応募して来たのですが、やはり訛りが強くまた英会話のイメージから採用できませんでした。

また、非常に浅はかな考えだとは思いましたが、
「カワイイ女性がいれば男が集まる」

の法則を用い「無料で出入りできるモニター会員」なるものを極秘裏に募集しました。つまり女性のサクラです。彼女らは、何時でも無料で参加できて、その代わり後で感想を聞いたり、イベントでの手伝いをしてもらう事になっています。
後々の話ですが、結果3名ほど見た目そこそこな女性が応募して来ましたが、機能(?)したのは一人だけで、他の二人は全然来ない。しかも、スタッフにはそのことは業務上内緒にしていたので、そのサクラの子とばかり話すと言うマヌケな結果に。

 とにかく、ホームページでのオープン告知からは、慌ててやらなければいけない事が目白押しです。
僕の様な怠け者は、誰もやれと言ってくれない場合、まずは「絶対やるぞ!と皆に宣言してしまって、出来なかったらカッコ悪いから頑張る」の法則を用い自らを追い込むのが最良の策なのです。

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 遂に迎えたオープンの日、僕はすっかり夜型になっている体を元に戻さねばと頑張って午前9時頃起きました。お店は夕方4時からですから別に今までどおり昼に起きても大丈夫だったのですが、一応準備があります。大方は前日に済ませていましたが、やはりチェックしたり、足りないものを用意する事もあるだろうと。

午前中には全てのチェックを済ませ、リビングでテレビを見るくらいの余裕がありました。その時みのさんがやってたかな。良く覚えていません。
何度もチェックしては休み、しかし、まだ足りないものがあるのでは、とあまりテレビに集中できませんでした。
長ソファに横になっては立ち上がり、そわそわと時間を気にして、後で良く考えると昼食をとるのも忘れていました。

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 その最初の日、カフェ「you」でオープンしたG-Flexには思いもかけず沢山のお客さんが、オープンと同時に来てくれたのです。
4時前には店の外でうろうろして待っている人がちらほら居ました。中には知らない人もいます。これにはかなり驚きました。それと同時に若干戸惑ってしまいました。ウソみたい。
僕はまだ宣伝とかはしていなくって、でも知り合いの何人かの方々から「最初の日に行きます」とメールを頂いたりしていたので、もしや、とは思っていました。これは正に嬉しい悲鳴です。
・・・しかしその時、困った事にスタッフがいなかったのです。

正確には、居たのですが、何処かに行ってしまっているのです。
僕はこの日の為に3人のレギュラーを揃え ていたのでした。しかし、さっきまでいたDerwinはちょっと、と言って出たきり戻って来ません。Pricilaもトイレかなと思っていて、何処かにいなくなっています。そう 言えばまだJoeがまだ来ていない。
僕は大変慌てました。なんと10人以上の人が待っていたのです。

「皆さん、すみません!すぐにスタッフが来るので、ちょっと待ってください!」

トイレや店の外を駈けずりまわりました。しかし見つかりません。そうか、携帯に電話をしよう!
・・・繋がらない。ちくしょう、これだから外国人は信頼ならない。。。
来てくれたお客さんは皆ざわつき出しました。お客さんの中には全く僕が知らない人もいるのです。後で言い訳もできない。
いきなり初日から困った事になりました。(ううう、初日からこんなことになるとは・・・)僕は頭を抱えました。今まで何の為にやってきたんだろう・・・。

*

「おんちゃん!」
母親の声と、背中を叩かれて僕は目を覚ましました。
「もうそろそろ時間じゃないの?」
「あ?」

気がつくとリビングで、テレビが付けっ放しです。どうやらいつの間にかソファーで横になって眠っていた様なのです。時計を見ると2時でした。

「ゲッ、ヤバっ!」僕は急いで出かける用意をしました。もう出なきゃ。今日は初日なので早めに行かなければなりません。

半分寝ぼけで早足で思いました。
・・・我ながら、なんと楽天的な夢を見たことか、笑ってしまいます。夢と言うのはその人の本性と言うか本心を語るといいますが、初日にお客さんが予想以上沢山来たけどスタッフが見つからずに困る夢。
・・・あり得ない。
友達が僕にはラテンの血が流れているのでは、と評した事が思い出されます。もしかするとそうかも知れない。
寝ぼけ眼の僕は、今一度持ち物を確かめて、慌てて家を飛び出しました。

(了)

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「G-Flex ができるまで」最後まで読んで頂きありがとうございました。

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