その11・・・銀行恐るべし

またしても アップするのに随分と時間が掛かりましたが、実は書くべき内容にそれほど進展が無かったのです。その間、物件の申し込みのための資料や手続き、さらに融資の申し込みのための開業計画や資料、書類作りとバイトに没頭しておりました。
前回お話した、健康と生活費、さらに自分の店の宣伝のビラも将来一緒に配ろうと言う一石三鳥のバイトである「ポスティング」のお話を少しだけします。

ポスティング で僕が周った地域は、主に関内周辺です。関内には、商業地域やオフィス街以外にもいわゆる住宅街とは違った地域が存在しました。
ポスティングは集合住宅、つまりマンションなどのビルが何と言っても美味しいです。一度に2,30件固まってポストが並んでいるわけですから。渡された地図を見ると、だいたい大きな建物が密集している地域がわかります。
「うわ、この辺、すっげーオイシイじゃん」
その日周る場所を地図で確認すると、大きな建物が沢山あるようでした。しかし、駅からは少し離れています。マンションの密集地域だろうと思いました。

しかしその辺りに着いて、僕はちょっと目を疑いました。確かに沢山高いビルがありますが、とても古く、そして何より不思議なのは、大勢の人たちが道にあふれている事です。そのほとんどがまだ昼前なのに「酒」を飲んでいるのでした。その近辺に近づくにつれ妙な空気が流れていました。飲み屋もほとんど開いています。スナックからも大声でカラオケを歌っている声が聞こえています。もう一度言いますが、まだ午前11時です。ほとんどの人が5,60歳以上でかなり汚い格好をしています。
そう、そこはマンションではなく、簡易宿泊所の密集地帯だったのです。ドヤ街とでも言いましょうか。もうゴーストビルと化してしまった建物もあります。7,8階立てのマンション風の簡易宿泊施設がざっと30棟は固まっているでしょうか。1泊2000円程度で、駅から離れると割に新しい建物もありましたし建設中のものもありました。
天気のいい中、皆旨そうに酒を飲み、道端やオープンカフェ風(?)になっている居酒屋で談笑しているのです。建物の横には「小便禁止」と言う貼り紙があちこちに貼ってあります。こんな地域がこんなに身近にあるとは知りませんでした。

さらに 残念だったのは、その沢山の簡易宿泊所には、入り口にたった1つのポストしかなかったのです。とても効率が悪いです。それでも黙々と配る中、ふと長い行列に出くわしました。若者も並んでいます。ざっと200人くらいはいたでしょう。
(何だろう?)そう思って列の先へ行ってみると、広場に出ました。そこでは、大きな鍋がいくつか並んでいます。
そう、つまりどうやらそれは食事の配給のようでした。テレビでは見たことがある気がしますが、目の前で現物にひょんな拍子に出くわすと、何ともやりきれない気持ちになります。ある意味蔑んだ目で見てしまいました。しかし並んでいる人達は、普通で(当たり前)日常の一こまに過ぎないのです。

あと、さなぎの食堂と言うのがあって、NPO法人と書いてありました。昼食はすべて300円とありました。(せっかくだから、試しにここで食べてみるか。)と思い、入りました。もちろんあまり綺麗ではありませんでした。中には子供のクレヨンで書いた絵がいっぱい貼ってあって、立ち食いそばの倍くらいより広かったです。そこでは、結構いろいろなメニューがあり、なんと「うな丼」も300円だったのです。
300円のうな丼を頼んでみました。お客さんはみな男性ばかりで、黙々と食べています。他の客を見るとどうやらお金を払っているのではなく、何かの券みたいなものを出していました。奥のほうで「チ―ン」とレンジの音がして、しばらくして300円のうな丼が出てきました。あまり詳しい表現は出来ませんが、まあ、全部食べることは出来ませんでした(分量が多かったからではない

場所は別のところですが、妙なおじさんに話しかけられたりもしました。
「十万くらいあんのけぇ?」
 信号待ちの時そういきなり話し掛けてきました。
「は?」
「いや、何この地図?」
「あの、チラシをポストに入れているんです。」
「ああ、そう。金になるの?」

「いや、まあ1000枚で4000円です」
「俺も使ってもらっちゃおうかな」
でへへって感じで笑います。
「え?僕は使う側の人間じゃないですから・・・」
「お兄ちゃん、大学でてんのけぇ?」
「はい、一応・・・」
「そうよのぉ。これは頭良くなきゃできねえよねぇ」
「いや、そんな事はないと思いますが・・・」
そんな会話をして、アホくさいからさっさと逃げました。

本題に戻ります
物件の審査が済み、いろいろと特別な条件で契約を結べることになり、いよいよ融資の申し込みの段になりました。開業計画書を書き直し、何度もシュミレーションしてみて、必要書類を揃えました。そして、ビジネスローンセンターに電話しました。
「どうも、ご無沙汰しております。有限会社G-flexの矢田と申しますが、融資の申し込み準備がようやく整いましたのでご連絡させて頂きました。つきましてはお時間を頂き、内容の方を確認していただきたいのですが」
「ええと、ああ、G-flexの矢田さんですか。どうもお世話になっております」(どうやら覚えていてくれたのか?)
 融資担当者とは一ヶ月前くらいに1度きりしか会っていません。
「あの、実は以前とちょっと状況が変わりまして、あの、物件が別のものになったのです。以前お話していた物件は、オーナーさんとの条件が合いませんで、キャンセルしました。」
「ああ、あの看板とかの件ですか・・・」
融資担当の人は独り言のように言いました。その時僕はちょっと妙な気がしました。
あれから一度も会ってないよなあ。会ったときって、物件変わった後だったっけ?)そんな疑問が頭をよぎりました。 「あ、ええそうです。それで、今度は西口に良い物件が見つかって、そこは条件が合いまして、そこでは契約承諾書を出してくれるので、物件が押さえてある証明になります。」
すると銀行の融資担当者は比較的明るめの声で言いました。
「ああ、そうですか。そこに決まったのですね。いいや、その11をいくらクリックしても見れなかったですから、どうなったのかと・・・」
「?」
一瞬僕には状況が飲み込めませんでした。すると融資担当の人は続けて言いました。
「読んでますよ、「英会話コミュニティサロンができるまで」でしたっけ?」
「ええっ!?!」(どっひょーん!) 僕は文字通り大声で「ええっ!」と言ってしまいました。
「そ、それって・・・」
「いや、以前お話を伺って、こう言う人ならホームページを持っているだろうと思って、探したんですよ。」
「(ま、まさか・・・)、ぜ、全部読まれたのですか?」
「はい、随分前から」
まさかそこまで調べるとは。銀行恐るべし。
その時の僕の気持ちは大変に複雑なものでした。この赤裸々な内容の日記を全て銀行の融資担当者に読まれてしまった事への後悔にも似た気持ち、それと同時に、
「いやあ、あれ読まれちゃったんですかぁ。・・・ありがとうございます。半分困っちゃったですが、でもなんか半分は嬉しいです。」
と思わず言ってしまい、本当に複雑な気分でした。融資担当の人は少し笑いながら、
「あんなに手の内明かしちゃっていいのかな、と思いましたが・・・」言います。
「あの、あれは読んでいる人が面白いようにと、ちょっと作りが入っていたりして、あの、現実とはちょっと違うものでぇ・・・」
どうあがいても言い訳にしか聞こえません。
アポを取り付けて電話を切った後、しばし絶望感が僕を覆いました。

融資担当 の人は電話では多少笑いも入っていたかと思ったのですが、現実に会ってみると大変厳しく、ほとんど冗談は通用しそうにありませんでした。かなり詳細に渡って突っ込みが入り、さらに提出用の書類に関してとても丁寧に説明をして頂きました。最後まで笑いは無しでしたが、帰りに僕を送りに銀行のドアを出た瞬間だけ、 「あの代表取締役がただの取締役になったところ、面白かったですね。思わず笑っちゃいました」
そんな事で、このコーナーはしばらくの間閉鎖します。また再開する時はメール頂いてる方にはお知らせ致します。

⇒その12に続く